「住み慣れた自宅で、家族みんなで安らかに見送ってあげたい」。愛するペットが旅立ったとき、多くの飼い主様がそのように願われることでしょう。遠くの知らない場所ではなく、もっとも安心できる自宅で最後の時間を過ごさせてあげたいという思いは、ごく自然なことです。
ペット火葬の「訪問サービス」は、そうした願いを叶えるための選択肢です。この記事では、訪問火葬の仕組みや後悔しないための業者選び、当日の具体的な流れ、事前に知っておきたい注意点までを幅広く解説し、大切なご家族との最後の時間を穏やかに過ごすためのサポートをいたします。
訪問火葬で叶える、住み慣れた場所での穏やかなお別れ
ペットの訪問火葬とは、火葬炉を搭載した専用の車がご自宅や指定の場所まで来て、ご自宅の駐車場や、近隣の迷惑にならない安全な場所で火葬を行うサービスです。
訪問火葬には、主に3つのプランがあります。
立会い個別火葬 | ご自宅の駐車場などで、ご家族が火葬に立ち会い、お骨上げまでを直接行えるプランです。人の葬儀にもっとも近い形で、最後まで寄り添いたいとお考えの方に適しています。 |
一任個別火葬 | スタッフにご遺体を預け、火葬からお骨上げまでをすべてお任せするプランです。「火葬を直接見るのは辛いけれど、ご遺骨は手元に残したい」という飼い主様に選ばれています。 |
合同火葬 | 他のご家庭のペットと一緒に火葬するプランです。費用を抑えられますが、ご遺骨は返骨されず、合同墓地などに埋葬されます。 |
訪問火葬を依頼する前に、飼い主様ができること
大切なペットが旅立った後、火葬までの間にご遺体を適切に安置することは、最後の愛情表現のひとつです。以下の方法で、清らかな状態を保ってあげましょう。
安らかな姿勢に整える
ペットが亡くなると、2~3時間ほどで死後硬直が始まります。硬直が始まる前に、前足と後足を胸の方へやさしく曲げ、眠っているような自然な姿勢に整えてあげてください。硬直してしまうと体が伸びたままになり、棺に納まらない場合があるためです。
目や口が開いている場合は、そっと閉じてあげましょう。これらの処置は、ペットの尊厳を守るだけでなく、ご家族の心の準備にもなります。
体を清め、冷却する
濡らしたガーゼやタオルで、体をやさしく拭いて清めてあげてください。特に口や鼻、お尻周りは丁寧に拭き取ります。
腐敗の進行を遅らせるため、保冷剤や氷をタオルで包み、頭部やお腹のあたりに当ててください。直接当てると結露でご遺体が濡れてしまい、かえって傷みが進む原因となるため、注意が必要です。
ペットシーツや新聞紙を敷いた箱や段ボールにご遺体を安置し、お気に入りだったタオルなどでやさしく包んであげるとよいでしょう。
【当日の流れ】お別れからご返骨までを具体的に解説
業者やプランによって多少の違いはありますが、ここでは立会いで個別火葬を依頼した場合の一般的な流れをご紹介します。
予約した日時に、セレモニースタッフが訪問火葬車で到着します。まずは依頼したプラン内容と料金に間違いがないか、最終的な確認を行いましょう。
火葬の前に、ご家族で最後のお別れをする時間が設けられます。生前好きだった少量のおやつや、きれいな生花、お手紙などを添えることができます。愛するペットへ、たくさんの「ありがとう」を伝えてください。
ご自宅の駐車場や、近隣の迷惑にならない安全な場所で火葬を執り行います。火葬にかかる時間はペットの大きさによって異なりますが、おおよそ1時間から2時間が目安です。この間、ご家族はご自宅でお待ちいただくことも可能です。
火葬後、ご家族の手でお骨を骨壷に納める「お骨上げ」を行います。お骨上げがつらい場合は、スタッフに代わってもらうこともできます。ご遺骨が納められた骨壷を受け取ると、全ての儀式が完了です。
後悔しない訪問火葬業者の選び方
大切なペットとの最後の時間を託す業者選びは、慎重に行う必要があります。以下のポイントを確認して、信頼できる業者を選びましょう。
料金体系は明確で、追加料金の説明はあるか
公式サイトに、ペットの体重別の詳細な料金表が掲載されているかを確認してください。見積もりの際に、「追加料金が発生する可能性」について誠実に説明してくれるかどうかも重要です。あいまいな料金説明や、後から高額な請求をする業者は避けましょう。
利用者の口コミや評判は信頼できるか
GoogleマップのレビューやSNSなどで、実際に利用した方の感想を確認しましょう。良い点だけでなく、改善点なども記載された客観的で信頼性の高い情報を集めることが大切です。
電話やメールでのスタッフの対応は丁寧か
スタッフの対応は、その会社の姿勢を映す鏡です。こちらの悲しみに寄り添い、一つひとつの質問に丁寧かつ分かりやすく答えてくれるかを確認しましょう。
公式サイトに会社情報がきちんと掲載されているか
会社の公式サイトに、正式名称、固定電話の番号、そして事業所の住所が明記されているかを確認してください。事業所の所在地が明記されていない、または検索しても実在しない場合は、トラブルを避けるためにも依頼しない方が賢明です。

訪問火葬を依頼する際に知っておきたい注意点
訪問火葬は多くのメリットがある一方で、事前に理解しておくべき注意点もいくつかあります。後で「知らなかった」と後悔しないために、以下の点を確認しておきましょう。
火葬後の納骨・埋葬は基本的に自身で手配する
訪問火葬サービスは、ご返骨までが一般的なサービス範囲です。その後の納骨や埋葬については、飼い主様がご自身で手配する必要があります。業者によっては、提携している寺院やペット霊園を紹介してくれる業者もあるため事前に相談してみましょう。
火葬場所と近隣住民への配慮
火葬車の停車と火葬作業には、ある程度のスペースが必要です。現代の火葬車は煙や臭いがほとんど出ない構造ですが、車両の存在感はあります。可能であれば、事前にご近所の方へ「ご迷惑をおかけします」と一言お伝えしておきましょう。
ペットのサイズによっては対応できない場合がある
火葬炉の大きさには限界があるため、超大型犬などには対応できない場合があります。必ず事前にペットの種類と体重を正確に伝え、対応可能かどうかを確認してください。
まとめ|訪問火葬は飼い主の想いに寄り添う選択肢
ペットの訪問火葬は、家族だけのプライベートな空間で、心ゆくまでお別れができる素晴らしいお見送りの形です。移動の負担がなく、時間や場所の融通も利きやすいため、多くの飼い主様の思いに寄り添うことができます。
しかし、そのお別れが本当に心温まるものになるかどうかは、信頼できる業者に巡り会えるかにかかっています。後悔のないお別れのためにも、今回ご紹介したポイントをぜひ参考にしてください。
この記事が、大切なご家族であるペットとの最後の時間を、穏やかで後悔のないものにする一助となれば幸いです。